TUT Formula

第13回全日本学生フォーミュラ大会参戦マシン TG10

コンセプト

“Always Smooth&Powerful”


いつでも,素直で,力強い挙動を示す車輌を目指して開発を行いました.この車輌コンセプトのもと,具体的な設計コンセプトとしては「低速域での最大ヨーレート向上」,「高速域での旋回安定性向上」,「中高速域での加速 G 向上」,「応答性のリニアリティ向上」の 4 つを掲げています.

カーボンモノコック

サスペンション取り付け部の局部剛性について評価を行いました。特に、構造上剛性が低いリアサスペンション取り付け部において剛性の強化を行うことで、コンプライアンスステアを抑制し、コーナリングパワーの減少を抑えています。また、増加した積層厚に対して、使用するカーボン材料の再検討・既存カーボンインサートのベークライトへの置き換え等を行うことで、作業時間の短縮と軽量化を図っています。

サスペンション

目標達成のためには、昨年度車輌から比較し、スキッドパッドの成績を向上させる必要があります。そのため、低速域でのヨーレート向上を狙い、サスペンションシステムはコンプライアンスを考慮した設計としました。また、基本構成は昨年のものを踏襲していますが、昨シーズン車輌を用いて検証を行った結果から、バンプステアや左右転舵比を最適化させています。リアのアップライトは、セッティング時間短縮を目的として形状の変更を行っています。

ブレーキ

後輪の制動力が強すぎたため、ブレーキの前後制動力配分の見直しを行いました。TG09では、前輪後輪ともにキャリパーのシリンダー径は同じ径でしたが、TG10では後輪のシリンダー径を小さくし、後輪側の制動力を減少させました。また、これまでブレーキローターの予備が無かったため、現在使用しているカーボンローターが使用不能となったときの予備用として、ステンレス製のローターの設計を行いました。

エアロダイナミクス

昨シーズンの大会において、高速コーナーでのテールスライドが目立ちました。そこで、低速域での旋回安定性を落とさず、高速域での旋回安定性を向上させるために、リアウイング搭載に踏み切りました。  リアウイングの役割は、主に高速コーナーにおいて、スタビリティファクタを正の値にし、弱アンダーステアにすることです。そのために、リアウイング重量を5kg以内に抑え、時速70km時に150N以上のダウンフォースを発生させる設計を行いました。

ステアリング

TG09ではステアリングに剛性感がない、ダイレクト感がないという意見がありました。また、低速域での最大ヨーレート向上のためTG10では、弱点であったステアシャフトを強化、ステアリングマウントも薄肉大径化することで、比剛性を向上させました。結果、ステア系のねじれ剛性が4.6[Nm/deg]から13.7[Nm/deg]へと向上し、旋回Gが1.5Gの際、コンプライアンスステアを1.75[deg/N]から0.58[deg/N]へ減少させました。これによりヨーレートの向上が期待できます。

タイヤ・ホイール

これまで搭載していたカーボンホイールでは剛性が足りないため、旋回が安定していませんでした。そのため、高剛性化を目標とした積層構成の見直しを行いました。 高剛性化により、高速域でのホイールのたわみを抑制でき、タイヤの接地圧が増加するので旋回安定性が向上します。リム部の積層数を増やしたことで、解析上では剛性が約8%増加する結果が得られています。 リニアリティの向上に重点を置き、タイヤの選定を行いました。タイヤデータよりスリップアングルに対する横力の立ち上がりに注目し、Hoosier製R25Bを採用しました。

ドライブトレイン

ドライブトレインでは主に「中高速域での加速G向上」と「高速域での旋回安定性向上」を狙いLSDの調整を行います。具体的には、LSD内部のワッシャーの枚数を変えることによって、イニシャルトルクの変更を行います。また、デフマウントの厚さを薄くすることにより車体の軽量化も狙いました。

電装

TG09ではラジエータのファンをスイッチ化したことで入れ忘れがありました。そこでTG10の設計ではエンジンをかけてから数分後、自動でファンが回るように変更を試みます。また、TG09ではモノコックに設置されていたインストルメント・パネルをTG10では、手元のステアリングホイールに設置して視認性の向上を図りました。

吸気系

吸気系において設計コンセプトに関係してくるのは主に2つです。1つ目の「中高速域での加速G向上」については、8000rpmでパワーを出せるように吸気の脈動効果、慣性効果を計算しました。また、2つ目の「応答性のリニアリティ向上」については、TG09よりも吸気系全体の曲げを少なくし、吸気管内部における空気の抵抗を少なくすることで、空気の流速を保ったまま吸気し、ドライバーが欲しているパワーを安定していつも得られるようにしています。さらにサージタンク形状についても4本の吸気管に均等に空気が送られ、エンジンの各シリンダー間にむらのない吸気が出来るよう解析を用いて検討しました。

燃料・冷却系

冷却系は、クロスフロー式のラジエータを使用しております。今年は更に冷却効果を高めるために、新たにシュラウドを取り付けました。また、カウルから入ってきた風をより無駄なく取り入れるために、ブロック体を作り、エンジンの温度を上げ過ぎない様にしています。燃料系は、燃料タンクの容量を増加させることによって、燃料切れが起こらないようにしています。

エンジン

エンジンは、点火タイミング調整と空燃比を調整していきます。点火タイミングは吸気、排気に合った点火タイミングに近づけることで、パワーアップや燃費の向上を図ります。TG10もTG09と同様にエンデュランスで変速を行わないことや、トルクの谷などがあるとタイムが落ちてしまうと考えています。そのため空燃比は、理論空燃比に近づけていき、そこからドライバーが操りやすいように改善します。

主要諸元

全長2956mm
全高1104mm
全幅1406mm
ホイールベース1700mm
トレッド 前/後1230mm / 1200mm
最低地上高30mm
車重227kg
エンジンPC37E 599cc
最大出力(クランク軸出力補正値)70ps/11000rpm
最大トルク5.3kgm/8000rpm
駆動方式チェーン駆動
サスペンション 前/後ダブルウィッシュボーン / ダブルウィッシュボーン
ブレーキ 前/後アウトボードツインローター / アウトボードツインローター
タイヤ 前/後20.5 x 7.0-13 Hoosier / 20.5 x 7.0-13 Hoosier